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Artist

FANIA ALL STARS

Title

HABANA JAM


HABANA JAM
Japanese Title 国内未発売
Date 1979
Label FANIA JM554(US)
CD Release ?
Rating ★★
Availability ◆◆


Review

 現在CDで聴くことができるウィルフリードのもっとも旧い音源。本盤は、1979年3月にファニア・オール・スターズ(以下FAS)が、サルサの形成にもっとも大きな影響を与えたキューバ音楽の聖地でおこなった歴史的なコンサートの記録である。メンバーの大半がニューヨークに活動拠点を置くプエルト・リコ系のミュージシャンであったFASの演奏に接したキューバのミュージシャンたちは「こんな程度ならオレたちのほうが上」と感じて、アフリカ人プロデューサー、ラオール・ディオマンデーの求めに応じて、79年11月におこなったセッションこそ、エストレージャス・デ・アレイートによる歴史的な名演である。まさしくことばのとおり、キューバのミュージシャンたちは格のちがいをまざまざと見せつけてくれた。
 
 そもそも、わたしはFASの音楽をあまり高く買っていないのだが、ここでの演奏はFASが末期症状を来したころの輪をかけて感心できない退屈な演奏である。ちっとも熱くならないし、リズムに粘りがまったく感じられない。
 
 自分たちがマンネリになっていることがわかっていたからかどうか知らないが、当時、ロス・ベドゥイーノスを率いて'BARBARAZO'でヒットを飛ばしたメレンゲ界の新鋭ウィルフリード・バルガスをゲストに招聘して、新しい血を引き入れようとしたのだろう。
 だが、ウィルフリードは、'MI GENTE/BARBARASO'のメドレーにほんの1分程度、歌で参加させてもらっているだけ。第一、このメドレーにしてからが、ダサいサルサのリズムにすっかり染めぬかれたエクトール・ラボーのヘタな歌が中心で、「コイツらは当時、なぜ'BARBARAZO'がヒットしたのかまったくわかっていなかったんだな」ってつくづく思う。このことは、'BARBARAZO'を'BARBARASO'と誤植しているところに象徴的にあらわれている。ヤツらはメレンゲを一段低く見ていて、どうせ連れてきてやったというぐらいにしか感じていなかったのだろう。

 じっさい、いまだCD化されていないこの時期のウィルフリードとロス・ベドゥイーノスのアルバムを聴くと、メレンゲに混じってかならずサルサ・ナンバーも何曲かとりあげていて、サルサの傘の下でしかメレンゲが生きていけなかった当時の状況をよく物語っている。ウィルフリードはウィルフリードで、自分に箔を付ける絶好の機会ととらえていたにちがいあるまい。アルバムとしての評価では、本当のところ1点といきたいところだが、わたしが勝手に作った規程によると、「聴く目的ではなく、持っていることに価値を見出せる」ようなアルバムは4点ということになっているため、これに従うことにした。


(10.23.02)



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by Tatsushi Tsukahara